まちづくり基本条例の解説
前文

町民憲章(昭和41年11月制定)は、町民自らが策定したみんなの誓いであり、その理想は、今日でも私たちの願いです。

先人たちから受け継いだ豊かな自然環境を守り育て、誰もが安全で安心して暮らせる地域をつくっていくことは、私たちの務めでもあります。

これからの時代は、私たち町民こそがまちづくりの主役であることをはっきりと意識し、町民、議会、行政が立場にとらわれず、誰もが清水町を担っている大切な一員であるという原点に立って、みんなで情報を共有し、互いに尊重し合い、助け合い、協働し、一人ひとりがそれぞれの立場で、まちづくりに参加することが求められています。

このような、考えに基づき、私たち自身が一歩ずつ成長し、次の世代に残せる住みよい町を築いていくことを目指し「町民誰もが参加する協働のまちづくり」という理念を実現するために、この条例を制定します。

解説

この前文は「まちづくりの主役は町民」であることを再認識して、町民、議会、行政がお互いに尊重し、協力し合って、自分たちの町を築きあげていくことが大切であることを「思いを込めて」述べたものです。

この条例と町民憲章との関わりなど「条例の目的」を補完して、町民憲章に掲げられている理想のまちをつくるため「町民誰もが参加する協働のまちづくり」の実現が必要であることを明記しました。

(条例の目的)

第1条 この条例は、町民、議会、行政が互いに尊重し合い、協働のまちづくりを行うために、町民参加に必要な情報を共有し、町民誰もが積極的にまちづくりに参加できるように、町政運営の基本的なことがらを定めることを目的とします。

解説

「町民誰もが参加する協働のまちづくり」を進めるためには「情報の共有」が大前提であるとともに「協働のまちづくりを進めるための基本的なことがらを定める」ことをこの条例の目的として明記しました。

地方自治の本旨に基づき定められた「地方自治法」の規定に「執行機関」「議事機関」の権能が定められており、町民にそれを超える権限を与えるということではありません。地方自治法など法律の枠内での町民参加を推進することとなります。

(用語の定義)

第2条 この条例において使われる用語は、次のように定義します。

(1)町民 「町民」とは、町内に住み、働き、学ぶ全ての人のことをいいます。

(2)町民参加 「町民参加」とは、町の計画や政策立案などに町民の意思が反映されることや、まちづくりへのさまざまな形での町民の活動をいいます。

(3)協働 「協働」とは、町民、議会、行政がそれぞれの役割と責任を自覚して、互いを尊重し、協力してまちづくりに取り組むことをいいます。

解説

この条例の中で重要な用語である「町民」「町民参加」「協働」についてその意味を説明しています。

この条例では、清水町に住所を有しない通勤者、通学者や、町内に事務所や活動の拠点を置く法人、団体もまちづくりの大切な担い手と考え「町民」と位置づけました。

町民憲章が掲げる理想のまちづくりをつくることを目標として、町民も議会も役場も、それぞれの役割を果たし、同じ目標に向かってまちづくりを取り組むことを「協働」と定義しました。

(町民参加の原則)

第3条 町民は、まちづくりの主役であり、町政に関する情報を知る権利を持っており、町の計画や政策立案などさまざまなまちづくりに参加する権利を持っています。

2 町民はまちづくりへの参加について平等の権利を持っており、社会的又は経済的環境の違いや、性別、国籍、信条、心身の状況などにより差別されません。

3 まちづくりへの参加は、町民の自主的な行動であり、参加、不参加による差別的な扱いを受けません。

4 満20歳未満の町民は、それぞれの年齢にふさわしい方法で、まちづくりに参加する権利があります。

解説

この条文では町民まちづくりに「誰もが平等に参加する権利」を持つとともに「まちづくりへの参加は自主的で、参加しない、参加できないことで差別を受けないこと」を定め、すべての町民に機会均等を保障することを規定しました。

しかし、まちづくりの主役は町民であり、行政にお任せではなく、町民が自ら考え行動する「参加する責務」もあることについては第5条に規定しました。

まちづくりへの参加は、住んでいる住民や通勤、通学者など、それぞれの日常生活に密接な関係を持つことから、性別、国籍、信条によって差別されないと規定しました。ただし、清水町のまちづくりへの参加であり、選挙権など、法律等により定められている権利とは別の概念です。

(町民参加の保障)

第4条 町は、まちづくりの基本となる計画や条例の立案、重要な政策の決定に当たっては、町民参加に必要な情報の公表、案の決定に至るまでの手続き、町民参加の方法を明らかにして、町民のまちづくりへの参加を推進しなければなりません。

解説

「総合計画や各分野の基本となる計画」や「まちづくりの基本方針を定める条例」の立案「町政運営の基本となる政策」を決定する際に、町は「必要な情報の公表」や「案が決定されていくまでの手続き」、町民意見提出制度などの「町民参加の方法」を明らかにして、町民のまちづくりへの参加を推進することを定めました。

たくさんの事務事業に「町民参加」を行うことは重要ですが、そのために時間がかかり決定が先延ばしになったり、非効率になっては本末転倒ですので、町民の意見を求める余地のないものや、軽微なものなどについては、規則に例外規定を設けることとします。

清水町としての意思決定は、議事機関である「議会」において議決されるものであり、町民参加によって得られた結果を反映した政策等は、議決によってはじめて実現・具現化するものです。町は町民の意見を反映した提案を議会にし、議会が審査をすることで、内容が高められていくことになります。

(町民の責務)

第5条 町民は、地域の一員として自らの発言と行動に責任を持ち、まちづくりに積極的に参加し、互いに協力してこの条例の理念の現実に努めます。

解説

責務とは「責任と義務」であり、この条文で町民は「自分の発言と行動に責任を持つこと」と「互いに協力して協働のまちづくりの実現に努める義務があること」を定めました。

(議会の責務)

第6条 議会は、行政が公正かつ計画的に運営されているかどうかを調査、監視するとともに、町民、行政と協働して、この条例の理念の実現に努めます。

2 議会は、議会活動についての情報を、町民にわかりやすく説明しなければなりません。

3 議員は、町民を代表して、町民の意思が行政に反映されるように努めます。

解説

「議会」は、「町民誰もが参加する協働のまちづくり」の実現のため、地方自治法に定められている検査権や監査権に基づいて、町政の調査と監視の役割を果たし、議会の活動を町民に説明することを責務として明記しました。

「議員」は町民の代表として、その意思が町政に反映されるよう努力することを責務としました。

(行政の責務)

第7条 町長は、町の代表者として積極的に、公平かつ誠実に町政の執行に当たり、町民、議会と協働して、この条例の理念の実現に努めます。

2 町職員は、自らも地域の一員であることを認識して、職務能力の向上に努めるとともに、誠実かつ効率的に職務を遂行しなければなりません。

3 町は、地域活動や地域の奉仕活動を尊重し、支援します。

4 町の執行機関は、積極的に町政に関する情報をわかりやすく提供し、まちづくりへの町民参加の推進を図ります。

解説

この条文では「町長」「町職員」「町」などの責務について定めています。

「町長」は町の代表者として、情報提供や町民意見を取り入れる手続きを積極的に行い、町民、議会とともに、それぞれが持つ役割と責任を認識して、尊重し協力して「町民誰もが参加する協働のまちづくり」の現実に努めることを責務として定めています。

町長の指揮統轄のもの「町職員」は、能力の向上に努力して、町の仕事を誠実かつ効率的に行い、町教育委員会、農業委員会などの執行機関は、町民参加の推進のため、町政に関する情報を積極的に提供すること責務として明記しました。

(情報の共有と提供)

第8条 町の行政や財政、まちづくりについての情報は、町民すべてが共有するものとします。

2 町は、町政にかかわる情報を、町民に対して、わかりやすく速やかに提供しなければなりません。

解説

まちづくりについての情報は、町民と共有すべきものであり、町はわかりやすく、速やかに提供することを明記しました。

必ず公開しなければならない事項や情報の公表の方法などについては規則で定めます。

(個人情報の保護)

第9条 町は個人の権利や利益などが損なわれることがないよう、個人情報を保護します。

解説

まちづくりについての情報を公開するにあたり、プライバシーに配慮して、個人の権利や利益が損われぬよう保護することを明記しました。

本町では平成14年10月より「個人情報保護条例」を施行しています。

(委員の公募)

第10条 町の審議会、委員会、審査会、調査会などの附属機関やこれに類する組織の委員には、公募の委員を加えるよう努めなければなりません。

2 前項の委員を選出するときには、幅広い意見を取り入れるために、男女の比率や年齢等に配慮した人材の登用に努めなければなりません。

解説

まちづくりへの町民参加の代表的なものとして、審議会委員などについては、さまざまな意見を取り入れ、まちづくりに反映させるため、委員の公募に努力することを明記しました。

また、公募の実効性を高めるため、委員選任の際の手続き等については、規則に規定します。

(説明責任)

第11条 町は、まちづくりの基本となる計画、財政、条例、事業評価などの内容や、重要な政策の意思決定過程について、町民に積極的にわかりやすく説明しなければなりません。

2 町は、町民からの意見や要望に対して、速やかに回答し、わかりやすく説明しなければなりません。

解説

「総合計画や各分野の基本となる計画」や「予算、決算」「まちづくり基本方針を定める条例の制定、改廃」「町の事務事業の評価」などの内容について、町は、わかりやすく説明すること、まちづくりに大きな影響を与える政策については、その意思決定過程についても説明することを明記しました。

町は、町民からの意見や要望に速やかに対応し、説明することを明記しました。

(町民意見提出制度)

第12条 町は、重要な計画や政策の策定、条例の制定などに際しては、事前に広く町民の意見を求めるために、町民が意見を提出できる制度を設けます。

2 町は、この制度に基づいて提出された意見や提言について、速やかに公表するとともに、その意見を尊重しなければなりません。

解説

「総合計画や各分野の基本となる計画」やまちづくり基本方針を定める条例」の制定、改廃「町政運営の基本となる政策」の立案などに対して、町民が意見を提出できるよう制度として設けることを明記しました。また、提出された意見等は聞きっぱなしではなく、採用・不採用を問わず、意見に対する町の考えを付けて公表し、尊重することを明記しました。

軽微な事項や町民の意見を求める余地のないものを除き、審議会や住民説明会などの町民参加手続きを行わないものについては、原則的に町民意見制度の対象となります。

ただし、町民意見提出制度は、文書等記録性を重視し、口頭による意見は対象となります。

(住民投票)

第13条 町民は、政策の決定や変更について重要と認めることがらについて、有権者の50分の1以上の者の連署をもって、その代表から町長に対して住民投票を請求することができます。

2 議員は、政策の決定や変更について重要と認めることがらについて、議員の定数の12分の1以上の者の賛成を得て、住民投票を発議することができます。

3 町長は、政策の決定や変更について重要と認めることがらについて、前2項及び自らの発議により、議会の議決を経て条例を定めることにより、住民投票を実施することができます。

4 住民投票の実施に必要な手続等は、前項の条例において定めます。

5 町長と議会は、住民投票の結果を尊重しなければなりません。

解説

この条文を設けなくても、地方自治法に規定する「条例の制定請求」等により、住民投票は可能ですが、「町民による住民投票の請求」「議員による住民投票の発議」「町長による発議と住民投票の実施」について、地方自治法での定めをわかりやすく記載しました。また、町長と議会は住民投票の結果について尊重することを明記しました。

町民が住民投票の実施を請求する際には、署名とともに住民投票条例案が付けられて、その代表者から町長に住民投票の実施を求めます。町民が請求する場合にわかりやすいように様式を規則に定めます。

請求を受けた町長は自分の意見を付けて議会の審議に上げ、最終的に議会が住民投票条例の制定すなわち住民投票の実施の可否について議決を行うこととなります。必要な手続きや投票資格などはその都度、住民投票条例で定めて実施されます。

「住民投票」と「議会制民主主義」の関係は、住民投票条例の制定を議会が議決することで住民投票が実施されるため、議会の機能を侵すものではありません。

住民投票の結果は、法的な拘束力を持つものではなく、町長への諮問的性質を持つものですが、町民参加を推進する「住民自治」の保障という観点から出来るだけ町民の意思が反映されるようにすべきと考えられています。

(条例の位置付け)

第14条 この条例は、本町のまちづくりの基本となるものであり、他の条例や規則などの制定に際しては、この条例の理念と目的を最大限に尊重しなければなりません。

解説

本来、条例に上下関係はありませんが、この条例が他の条例の基本となる条例と位置付け、条例の制定や改正において、最大限に尊重されるよう定めることで、この条例の最高規範性を表現しました。

(審査会の設置)

第15条 町は、この条例がどのように行政に反映されているかを審査するために清水町まちづくり基本条例審査会を設置します。

解説

「清水町まちづくり基本条例審査会」は町長の諮問に応じて、この条例の大きな柱となっている情報の共有や審議会委員の公募、町民意見提出制度などについて、適正に実行されているかどうかを点検する組織として設置することを明記しました。「清水町まちづくり基本条例審査会」の具体的な内容については規則に定めます。

(条例の見直し)

第16条 町は、施行後、3年を越えない期間ごとに、この条例が協働のまちづくりの推進のためにふさわしいかを見直します。ただし、必要が生じた場合は、その都度、見直しをすることができます。

解説

この条例の内容について、施行後の財政運営の状況や社会情勢の変化などから、3年を越えない期間ごとに見直すことを明記しました。また、3年ごとの期間にこだわらず、必要と認められる事由が発生した場合について、遅滞なく見直しをすることができることとしています。

この条例を不変的なものとは考えず、実際の条例の運用による積み重ねなどにより、町民、議会、行政がともに条例を育んでいくという考え方です。

(委任)

第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定めます。

解説

簡素で、町民に読まれる「わかりやすい条例」とするため、基本的なことを条文に盛り込み、手続き等具体的事項は規則等に委ねることとしました。